わたしの嗜好品
酢、柑橘、山椒、そして唐辛子。
これらの刺激なくして、「食」を愉しむことはできない。
一体その魅力が何であるのかを考えてみると、もはやそれは味覚ではないことに気づく。
もちろん味はあるが、それらの要素で大切なのは、「香り」と「刺激」のふたつなのである。
味覚ではないにしても、それを含めた経験すべてを「食」するというのだろう。
疲れていると身体が酸味を欲する、ストレスが溜まると辛いものが欲しくなる、などと耳にするが、それが真実であるのなら、わたしは年がら年中その精神状態と共にあることになる。
小さい頃から、父の影響で日常的にいろんな料理にタバスコをかけて食べていた記憶がある。
高校では学食の唐揚げ丼にマヨネーズが真っ赤になるまで七味を混ぜ込んだりしていた。
そして大学生になると、食に自由が効くようになり、元田中にある四川亭の担々麺の辛さを1段階ずつあげて辛さレベルを制覇してみたりもした。自炊をする際には鷹の爪は通常以上に入れるのが常で、パッタイやフォーには3玉分ほどのライムを絞り、中華系の料理は酢をドポドポとかけたくなる。
最近は友人と生活を共にしていることもあり、控えてはいるが、舌が痺れる感覚も、鼻まで上がってくる香りも、汗をかきながら頬張る感じも快感で、いつだって枯れることなく欲している。
しかし問題もある。わたしは刺激を愛していても、わたしの身体はそうでないということである。とりわけ、唐辛子系の辛さを大量に摂取した暁には、身体への影響は大きい。
まず食後数時間後から腹痛が始まる。そして食べている時とはまた違った冷たい汗をかきながらトイレを往復しなければならなくなるのだ。さらに違った腹痛を経験し、病院に行ったことがあったのだが、香辛料の摂りすぎによる膀胱炎とのことだった。
この4年間でだいぶん鍛えられ、腹痛はほぼなくなったが、母はわたしが将来大腸ガンや慢性的な膀胱炎を患うのではないかといつも心配している。
自分でも、さすがに体を労ってあげないとダメだな、と思ってはいるものの、なかなかやめられないのがまさに嗜好品。
明日からはインドにて香辛料にまみれた生活になるが、楽しみつつも、よく身体と話し合って食したいと思う。
05/2017